禅寺丸柿の取材
「禅寺丸柿」保存会会長さんに取材しました!

日本で最初の甘柿

禅寺丸柿は、鎌倉時代前期にあたる建保2年(1214年)に、現在の川崎市麻生区王禅寺地内、星宿山王禅寺の山中で発見され、 果実の甘さが記録されたことにより日本で最初の甘柿として歴史に名をとどめています。

「柿生」の地名も、ここからつけられたと伝えられたといわれています。柿生のほかに東京の調布や八王子などにも点在しているそうです。 禅寺丸柿は、小粒で丸く、水分が豊富なところが特徴。

<禅寺丸柿>

禅寺丸柿保存会の活動

かつてこの地域に発展をもたらした禅寺丸柿の木を守ろうと、平成7年に地域住民により発足されたのが「禅寺丸柿保存会」です。 今日はその保存会会長の森 章氏にお話を伺いました。取材場所は森会長のご自宅玄関。 森会長の奥様が座布団をご用意くださり、手入れの行き届いた庭を眺めつつ取材は進行していきました。 森会長はその道のプロといった風貌で、“静かなる威厳”をもつ、優しい笑顔の方でした。

現在保存会の会員は167名。主な活動は、王禅寺の境内にある原木の手入れや、小中学校や公園への植樹活動、各種イベントの開催、苗木の地域住民への贈呈 (200本の苗木を3年にわたり計600本を贈呈)などを行っているそうです。
また、山梨のワイン工場と協力して、平成9年(1997年)には禅寺丸柿ワインの製造販売を開始し、禅寺丸柿を次世代に引き継ぐ活動も行ているとのこと。
禅寺丸柿ワインの他に、当時「禅寺丸柿酢」も候補に挙がったそうですが、検討した結果、製品化は難しいということで、今では「禅寺丸柿酢」を各家庭で 作って楽しんでいるそうです。禅寺丸柿ワインは毎年3000〜4000本作り、1月から販売をスタートして夏にはほぼ完売してしまうほど好評ということです。

一方、教育委員会から川崎市経由で依頼があり、毎年3年生に禅寺丸柿の話をされているとのこと。 「柿の木とともに文化も後世にしっかり繋げていきたい」という会長の思いが垣間見られました。

<毎年川崎市長にも贈呈される
禅寺丸柿ワイン>

樹齢400年の柿の木

川崎市初の国登録の記念物として、2005年5月に王禅寺境内にある樹齢450年の原木を含め、全部で7本の禅寺丸柿の木が登録されたそうです。 そのうちの1本が会長の自宅庭にそびえていた。6mを超えるほどの高さを誇る、手入れの行き届いた素晴らしい木で、枝にはたくさんの柿の実がついていました。 会長は「ばっぱさみ」と呼ばれる、手造りの先の割れた竹でできた道具を使って、簡単に楽々と禅寺丸柿を枝ごととり、それを私たちに味見をさせてくださいました。 皮ごと“がぶり”とかじると、甘い柿の味と、たくさんの果汁が、口いっぱいに広がりました。ちなみにこの木は樹齢400年。柿の木は古いほうが甘い実をつけるということ。 一年ごとに枝ごと実を収穫し、翌年は別の枝と、毎年枝を切り詰めて実をならし、丁寧に世話されているため、実の数も多く、木の形も美しかったです。

一方、近隣の道路わきなどには、野生に近い禅寺丸柿の木がありましたが、枝も折られず、消毒もされないため、葉が薄く、実も少なくなってしまうということです。

<記念物に指定された自宅の木から禅寺丸柿をとる森会長>

禅寺丸柿の輪

さて、今でも区内で約2千本は残っているといわれる禅寺丸柿。保存会ができるほど希薄なものかと思いきや、種苗メーカーなどでは普通に禅寺丸柿の苗木が 売られているということでした。ただ、実をならして食べるのが目的ではなく、現在主流の柿(次郎や富有など・・・)の受粉のために植えられているということでした。 小粒で種のある禅寺丸柿は、今では木の持ち主でもあまり食べないということ!何ともったいないことだと思う。
先に書いたように保存会が計600本の禅寺丸柿の木を麻生区民に贈呈したが、若い木になる柿の実の多くは渋いとされています。 それは、禅寺丸柿は「不完全甘柿」といって、種子の数が多いと甘く、種子の数が少ないと渋くなるそうです。贈呈された苗木を育てても、 すぐには甘い実がならないそうなので、「気長に待ってほしい」と森会長。

保存会が発足されて今年で13年。森会長に今後の抱負を伺いました。
「学校へ行って禅寺丸柿の話しをすると、みな一生懸命聞いてくれる。そんな子供たちの反応が嬉しい。苗木をもらった人は、『柿生の柿祭り』などで交流を深めて、 禅寺丸柿の話をたくさんしてほしい。自分もそういった場所で、どんどん話をしていきたい。そうやって禅寺丸柿の輪が広がっていくことを願っている。」

明治時代に天皇に献上されたこともある「禅寺丸柿」をとっても誇りに思っている様子が伝わる言葉でした。

取材後、王禅寺の原木を見に行きました。静かな寺の境内にあるこの原木も、森会長が手入れしているといいます。

<王禅寺の石碑>

<王禅寺の禅寺丸柿の原木>

この大きな木から崇高な気配さえ感じ、しばらく見入ってしまいました。


<実は黒いゴマが沢山、懐かしい柿です>

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